anon chanのモジュラーシンセ講座

モジュラーシンセとは?

モジュラーシンセというのは、もちろん、シンセサイザーの仲間です。
シンセサイザーというのは、SFっぽい音を出す、アレのことですね。
多くの人が想像するシンセサイザーは、まず鍵盤があって、その上にスタートレックの宇宙船の操縦席に付いてるボタン的なアレがいっぱいついているようなアレ、だと思います。

ですが定義的には、別にキーボードなんかが付いていなくっても、音を合成したり、加工したりする機能があって、それによって結果的に様々な音色が出せる機械、そういうのは全部シンセサイザーと呼べるのです。

そんなシンセサイザーの中でも、モジュラーシンセというのは、シンセサイザーの元祖的なやつです。
ゆえに原始的な仕組みを持っていて、ゆえに原理的なところを理解するにはうってつけだったりします。

さて、モジュラーシンセであろうと、モジュラーじゃないシンセであろうと、その目的とするところは、なるたけ少ないコストで、なるたけ色んな音色を出せるようにすることです。

モジュラーシンセの場合、音を出したり、加工したりするシンセサイザーの各機能を、モジュールという単位に分割した上で、そのモジュールたちを自由に組み合わせて繋げることによって、これを実現しています。


モジュラーの種類

あるひとつのモジュールは、あるひとつの機能を持っています。
たとえば、あるモジュールは、原始的な音(たとえば、ただの"ビー!"みたいな、面白みのない音です)の信号を、ただ単に出力する機能だけを持っています。
それから、あるモジュールは、ただ単に入力から入ってきた音の音量を変える機能だけを持っています。

各モジュールには入力端子と出力端子がついていたりいなかったりするので、この端子同士をパッチケーブルでいろいろ接続することで、各モジュールの機能を組み合わせて、どんどん複雑なシステムにしていくことが可能というわけなのです。

以下に、kawaii synthにも実装されている、基本的なモジュールの種類を挙げます。kawaii synthの場合、アイコン(円に並んでいるネコの顔的な生物のことです)の色ごとにモジュールが分かれています。(マウスを顔の上に乗せると、左上のmod typeの枠にモジュールの種類が出るので注目してみてください)
簡単のために、本来的な言葉の意味に厳密でない説明もありますが、とりあえずkawaii synthやその他シンセで音を作るために必要な部分のみをさらっていきます。

オシレーター…単純な音の信号を出力します。このオシレーターから出力される信号を他のモジュールで加工することによって、色々な音を出すことができます。

アンプ…入力にうけた音の信号を増幅して出力に渡します。これによって、音量を変えることができます。

ノイズ…ノイズ信号を出力します。kawaii synthでは、「noise」がホワイトノイズを出力します。ホワイトノイズというのはいわゆる、深夜のテレビの砂嵐が「シャー」となる時の音ですね。

ディレイ…入力に受けた信号を遅延させて出力します。これによって、お風呂とか、ホールなどで、音が壁にぶつかって反響してくるような効果を出すことができます。

フィルター…特定の周波数成分を取り除きます。これにより、「音色」を変えることができます。kawaii synthのfilterはローパスフィルターを採用しています。ローパスフィルターは、周波数成分を高いほうから削っていくことによって、音を柔らかい感じにできます。効果を強くすると、こもった感じが出ます。

ゲート信号…オン(1)かオフ(0)かどちらかの状態を伝える信号です。例えばキーボードが付いているシンセなどでは、鍵盤が押されている間はオン、鍵盤を離している間はオフの信号が送られます。これによって、発音のタイミングを操作できます。kawaii synthでは、「Pulse」モジュールが一定の感覚でゲート信号を出力します。

エンヴェロープ…受け取った信号に時間的な変化を与えます。kawaii synthではアンプの信号(つまり音量)をエンベロープで制御することができます。これによって、音の立ち上がりと音の消え方を、なだらかにしたり急にしたりできます。なだらかにすると弦楽器っぽさを演出でき、急にするとパーカッシブな印象にできます。

シーケンサー…シーケンサーには、いくつかの操作ノブの値を保存しておくことができ、規定の時間ごとにその値を呼び出して出力します。これについては、また後ほど詳しく説明します。


モジュラーシンセのパッチング

kawaii synthを例に、音を出す基本をやってみます。操作できる環境がある方は、実際に音を出してみると分かりやすいと思います。また、他のシンセサイザーでも、ここでやる基本の考え方は応用できるはずです。

さて、まず音を出すにはどうすればいいでしょうか。
音を出すには、音の信号を作り出しているモジュールであるオシレーターと、音をアウトプットするためのスピーカーが必要です。
逆に言えば、単純な音を出すだけなら、オシレーターとスピーカーをケーブルで繋ぐだけです。(ケーブルを繋ぐことをパッチングといいます)

kawaii synthでは、Osc_tri(三角波を出す)とOsc_sqr(矩形波を出す)がオシレーターにあたります。三角波は比較的丸い音で、矩形波はギザギザした音です。

操作手順:
(1)Osc_triのAV outの出力端子から、スピーカーの入力にケーブルを繋ぎます。

AV outというのは、音の信号を出力するための出力端子です。
実はモジュラーシンセの入出力のタイプにはAVとCVの2種類があって、音(Audio)として信号の入出力を行う場合は、AVの方を使います。CVについては後ほど説明します。
kawaii synthでは、AVの入出力端子はモジュラーの口が赤い色のものです。
(画面左上に出るcableの表示も参考にしてください)
※音が大きい場合があるので、PCの基本音量に気をつけてください。

(2)Osc_triのノブを回して、周波数を適当な高さまで上げます。

オシレーターに付いているノブでは、オシレーターの出力する音信号の周波数を操作することができます。(kawaii synthでは、モジュールと同じ色のノブが各モジュールに対応しています)
周波数の上げ下げは音の高さの上げ下げに対応します。人間に聞こえる最低の周波数は20Hz辺りからなので、あんまり低すぎると聴こえません。聴こえる高さまで周波数を上げてみましょう。

ここまででkawaii synthがうまく動作しない場合は、ブラウザをリロードしてみてください。それでもダメな時は、お使いのブラウザが対応していないかもしれません(動作確認ブラウザはChrome、Safariです)

さて、無事に音を出すことができましたが、これだけだと面白みがないですね。
次は、この単純な音を加工していきましょう。

音を加工する


効果が分かりやすいので、今度は矩形波の方を使ってみます

(1)Osc_sqrのAV出力→AmpモジュールのAV入力→AmpモジュールのAV出力→アウトプットスピーカー
の順でケーブルを繋ぎます。

(2)アンプのノブを回して音量を上げます

まずはこれで普通にOsc_sqrの音が出力されます。(この時、Osc_sqrの周波数ノブは十分な値まで上がっていること)
実は音量を変えるのは、手動でAmpのノブを回す以外にも方法があります。
オシレーターの信号を、アンプの音量をコントロールするために利用することができるのです。

それでは今、使っていない方のオシレーター、Osc_triを使ってこれを試してみます。

操作手順:
(1)Osc_triのAV出力→CvampのAV入力→CvampのCV出力→AmpのCv入力
の順でケーブルを繋ぎます。

(2)Osc_triのノブを少しだけ回して、低い周波数にセットします。

(3)Cvampのノブを回して、音量の上げ下げの効き具合を調整します。

オシレーターの信号は、周期的に上がったり下がったりする信号です。そこで、この上がったり下がったりを、アンプの音量を制御するのに使うことで、アンプの音量を周期的に上げたり下げたりするようにできます。
信号を音(Audio)ではなく、値を制御(Controll)する信号として他のモジュールに渡すには、CVの入出力端子を使います。(kawaii synthでは、口が白いやつです)

音量の上がったり下がったりする速度は、手順(2)でOsc_tri(アンプの音量制御に使っているオシレーター)の周波数を変えることによって変更することができます。
オシレーターの周波数というのは、1秒間の間に信号の波が往復する回数のことだからです。
ここでCvampOsc_triの信号を増幅/減衰しているので、Cvampの音量を変えることによって、どれくらいアンプの音が上がったり下がったりするか、の程度を変更することができます。

これと同じ原理で、
Osc_triのAV出力→CvampのAV入力→CvampのCV出力→Osc_sqrのCv入力
のように繋げば、今度は音量ではなくOsc_sqrの周波数、つまり音程が周期的に揺れることで、ヴィブラートの効果を生むことができます。
他のモジュールにも応用すれば、フィルターのかかり具合や、ディレイの長さなどもCVで制御することが可能です。

シーケンサーを使う


音の高さや音量などのノブの値を、予め保存しておいて、規定のタイミングで適用できると、メロディーを作る際などにも便利です。
こういう場合にシーケンサーが使えます。
シーケンサーには、メーカーやものによって変わりますが、平均で8個〜16個のノブが付いていて、それぞれのノブを予め任意の高さにセットしておくことができます。
kawaii synthは簡単なシンセなので、シーケンサーで使えるノブは4個になっています。

操作手順:
(1)Osc_sqrのAV出力→Output
を繋ぎます。

(2)PulseのGATE出力→SequencerのGATE入力→SequencerのCV出力→Osc_sqrのCV入力
を繋ぎます。

(3)Sequencerの4個のノブをそれぞれ任意の値にセットします

(4)Pulseのノブを回して、Sequencerのステップが進むタイミングを調整します

こうすることで、まずはSequencerの1番最初のノブの値がOsc_sqrの周波数を制御します。次に、一定の周期でSequencerが次のノブの値に進み、Osc_sqrの周波数が今度は2番目のノブの値で制御されます。
つまり、Sequencerの4個のノブを、1番目:めいっぱい回す、2番目:ちょっとだけ回す、3番目:めいっぱい回す、4番目:ちょっとだけ回す。
とした場合、Osc_sqrの音は一定の時間で高い音、低い音、高い音、低い音、と繰り返すことになります。

この一定の時間、のタイミングを決めているのがPulseから送られるGATE信号になります。
GATE信号は0か1のどちらかの情報を送る信号で、まずPulseの周波数が0と1が切り替わるタイミングの速さを決め、SequencerはGATEから1の信号を受け取った時だけ、次のノブの値にステップを進めます。

終わりに


駆け足で説明しましたが、モジュラーシンセの原理がなんとなくわかっていただけたでしょうか?
アナログモジュラーシンセは非常に互換性の高い仕組みを持っているため、ここに書いた原理をどんどん応用して、沢山のモジュールを組み合わせることによってもっと複雑な音を出すことが可能です。
またメーカーによって多機能な製品も沢山出ているので、まだまだ出来ることは沢山あります。

kawaii synthの簡単な機構でやれることには限界があるため、他のソフトシンセやアナログシンセで色々試してみると面白いと思います。

参考資料

kawaii synthを使ってみる

synthのデモプレイを見る

更に学ぶ→モジュラーシンセ関連本

(c)kawaii synth --- created by ruco